生徒さんから『愛用しているMartinのギターの弦高が高くなって、弾きにくくなってしまった』と相談されたので、お預かりして個人製作家のギター工房に調整を依頼しました。
名古屋は昔からギター製作が盛んだったので、今でもギターの工場や工房がいくつもあるんです。
『高価なMartin D-41なので、出来るだけ早く持ち主に返してあげたい』と思い、作業時間の早い工房を選んで自分で持ち込みました。
いつも自分のギターを持って移動するときは軽量ケースを使っているので、久しぶりに普通(?)のハードケースを持ち歩いたら重くて堪えました。運動不足だなぁ。
Martin(マーティン)って?
ギター教室の生徒さんの中にもMartinを知らない人がいるかもしれないので、おさらいしておきましょう。
マーチンもしくはマーティン(C.F.Martin & Co., Inc.)社は、1833年に創業したアメリカの代表的なアコースティックギターのメーカーです。エリック・クラプトンなど有名なギタリストも使用しており、この名盤「アンプラグド」のジャケットに写っているのも、もちろんMartinのギター。
特に1960年代のフォーク世代には、憧れのギターブランドなんです。ちなみに僕が20歳になったとき、記念に買ったのはMartin D-35でした。僕はフォーク世代じゃないけど、やっぱり憧れのメーカーでした。
調整の内容
通常はネックの反りを適正な状態にする為に、ネック内部にアジャスタブルロッドと呼ばれる金属の棒が仕込まれているはずですが…ギター内部を覗いてみると、アジャスタブルロッドの入っていないSQ仕様でした。
本格的に直すには、指板修整(フレットを抜いて、指板を削って真っ直ぐに修整する)が必要。修理が大掛かりになるため、今回はサドル(弦を支える白い部品)の高さ調整のみ行うことにしました。
12フレットで弦高を測り、弦を緩め、サドルを削り、弦を張ってまた計測。ひたすらそれを繰り返し、適性の高さに徐々に近づけていくという、地道な作業。思ったより時間がかかったけど、プロの修理技を目の前で見ることができたのは収穫でした。
弦高調整ではサドルの下面を削ることが多い。その方が簡単ですから。しかし製作家のこだわりか、プロフェッショナルの流儀(?)か。あえてカーブしている上の面を削り、1本いっぽんの弦の高さを微調整して正確に適正値を出していました。
各弦の高さが上手く出たところで、全体を削って仕上げをして完成。おかげで、以前よりだいぶ押さえやすくなりました。